こんにちは!行政書士松森です。
飲食店を開業するまでにはさまざまな準備が必要ですよね。でも、「開業までなにをすればいいの?」「何からやればいいの?」と疑問に思う方もいらっしゃると思います。
とくに、はじめて開業をしようとする方は何から何まで初めての経験ですから、わからないことがあるのは当然です。
しかし、開業までの流れを把握することは重要です。なぜかと言えば、自分自身の開業スケジュールが組み立てやすくなりますし、今やるべきことも見えてくるからです。
そこで今回は、はじめて飲食店開業をする方向けに「飲食店開業までの流れ」の全体像を紹介します。
目次
飲食店開業までの流れ全体像
細かいことを言うとたくさんあるのですが、今回は全体像を知るということを一番に飲食店開業の流れを見ていきます。
開業までの流れをざっくり見ると以下の流れで進みます。
- 飲食経験を積み自己資金を貯める
- コンセプト作り
- 立地、物件の決定
- 資金調達
- 内装工事
- 各種申請届け出
- 開業
飲食経験を積み自己資金を貯める
飲食業未経験者でも、もちろん開業することは可能です。でも、やはりその道で成功するには一度飲食業界に身を置いてみることをおすすめします。経験を積み重ねることによって、店舗を運営するとはどんなことなのか?が見えてきます。
具体的には、「売上を上げるにはどうすればよいのか?」、「利益を出すにはどうすればよいのか?」「人を雇うとはどういうことなのか?」など業界に身を置くことでいろいろな気づきを得ることができるはずです。
「美味し料理を振舞いたい」「アットホームなおもてなしをしたい」など開業前にさまざまな思いを持つこは構わないですが、それと経営することはまた別の話です。
アルバイトでも社員でも構いませんが、経営感覚を養うにはやはり業界に身を置いて観察するのが一番です。
また、融資を受けて開業する場合には経験の有無は重要なポイントです。金融機関も未経験の人に対しては慎重になるからです。
自己資金も重要なポイントになります。融資の申請は誰でもできるわけではありません。融資の対象者としての要件を満たす人が申請できます。例えば「創業資金の3分の一以上の自己資金がある人」などの要件が出されている場合があります。
飲食店で開業する場合は最低でも開業資金の3分の1以上の自己資金を貯めるようにしましょう。貯める場合には必ず通帳に記載するよにしてください。
コンセプト作り
コンセプト作りは非常に重要です。ここで、成功するかしないか7割以上は決まると言っていいでしょう。
コンセプトという言葉は聞いたことがある方も多いと思いますが、一言でいうと
「誰に」「どんな利用シーン」で「何を」提供するか突き詰めていくことです。ここを曖昧にすると、店の商品、雰囲気も曖昧になって、お客さんから分かりずらい店に見えてしまいます。
成功する秘訣として、お店を選ぶときに「わかりやすい」とい要素はとても重要です。お客さんはわかりずらいと、お店に入りずらいからです。
例えば、駅から家に帰る途中に小さな居酒屋があったとします。毎日通るので存在は知っていて気にはなっているが一度も入ったことがない。なぜなら、値段、メニュー、雰囲気がわからず怖いから。誰にでもこんな経験はあるのではないでしょうか。あなたの住んでいる街に1つや2つはあるはずです。
いかに、わかりやすくすることが大事かおわかりいただけるとおもいます。
コンセプト作りは半年ぐらい時間をかけてしっかり作ることをおすすめします。
立地・物件の決定
コンセプトができあがってくると、「誰に=ターゲット」に「どんな利用シーン」で「何を」提供するのかが明確になってきます。そうすると、ターゲットが店を利用する場所がよりはっきり見えてきます。例えば「40代サラリーマン」がターゲットで「会社の同僚との飲み会」で利用する場合はビジネス街が候補となるでしょう。「手ごろな夕飯を食べたい学生」がターゲットであれば学生街が候補になります。
このように、誰に、どんな利用シーンで何を提供するかを具体的に突き詰めていくと、必然的に立地も決まってきます。立地に迷う場合はもう一度「誰に」「どんな利用シーン」で「何を」提供するのか明確にしてみてください。
立地が決まれば、その立地の中で候補となる物件を探していきます。探す方法としては、インターネット、地元の不動産会社を自分で訪問する、知人や業者から紹介してもらうなどの方法があります。
資金調達
物件が決まったら開業資金を調達する必要があります。もし、開業資金を自己資金ですべてをまかなえるのであれば資金調達は必要ないですが、大抵の場合は自己資金ですべてをまかなえる人は少ないので、不足分を金融機関から融資してもらう必要があります。
飲食店開業者が使える融資は2つあります。一つは日本政策金融公庫。もう一つは制度融資と呼ばれるものです。この2つの融資は創業者向けの融資商品を持っており、無担保・無保証で融資を受けることができます。
日本政策金融公庫はご存知の方もいらっしゃると思います。特徴としては、全額政府が出資している公的金融機関で金利も低く、しかも固定金利、さらに、「新創業融資制度」を利用することで無担保・無保証で信用の低い新規開業者にも資金を貸してくれます。
次に制度融資ですが、これはあまり聞きなれない方もいると思います。制度融資は県や市町村などの「地方自治体」と「信用保証協会」「金融機関」の三者が協調して融資するというものです。事業実績がなく、信用力が劣る新規開業者に対して信用保証協会が信用を肩代わりすることによって金融機関も安心して開業資金を貸すことができる仕組みです。
各県や市によって異なりますが、地方自治体は信用保証協会に支払う保証料や利息を一部負担して、開業者の負担を減らしてくれるところもあります。
以上のことから、はじめて開業資金を調達しようとする方は「日本政策金融公庫」と「制度融資」のどちらかで融資を申し込む方法をおすすめします。
外観・内装工事
融資の申請も行いながら、物件の外観・内装工事にも着手していきます。外観・内装を決めるときに大事なことはコンセプト作りで検討したターゲットの「利用シーン」にマッチした外観・内装にすることです。
お手軽にさっとラーメンを食べたい10代20代男性向けに「高級な内装の個室席」を作っても、ターゲットの「利用シーン」にマッチしているとは言えません。そもそも個室席は、誰にも邪魔されず、友人や会社の同僚や恋人とコミュニケーションをとる場所が欲しいというニーズにこたえるためにあります。この場合、そこに力をいれるより味やボリュームに力を注いだ方が価値があります。
つねに、原点に戻り、「どんなターゲット」で「どんな利用シーン」で「何を」提供するのかを意識しながら外観や内装を決めましょう。
内装業者の選択ですが、自分がイメージする内装に近いお店に足を運び、内装業者を直接聞いてみるなどの方法もおすすめです。
各種申請届け出
飲食店を営業するには、保健所による営業許可が必要です。飲食業は食品を扱います。そこで、食品衛生法という食品の安全性の確保を目的とした法律に従って営業する必要があります。
申請手順ですが、内装工事にとりかかる前に設計図面を持って管轄の保健所に事前相談しに行きます。店舗が完成する10日くらい前に、申請書と添付書類をそろえて保健所に提出します。お店が完成したら、施設検査に保健所の人が来て許可基準に適合するか確認しにきます。この日に店舗未完成の場合は許可されませんので注意しましょう。検査合格後数日して許可書が交付されて営業開始となります。
許可を受ける注意点として、「食品衛生責任者資格の取得」があります。営業が許可されるには、先ほどの施設検査に合格することの他に、許可施設ごとに食品衛生責任者又はこれに代わる資格を有する者1名を置かなければいけません。
保健所の営業許可申請の前に食品衛生責任者の資格を必ず取得しておきましょう。取得が遅れてしまうとOPEN予定日に営業できないことになりかねませんので注意してください。
食品衛生責任者の資格取得方法ですが、各都道府県ごとに主催している社団法人食品衛生協会などにおいて養成講習を受けることによって取得することができます。また、調理師、栄養士、製菓衛生師などの資格がある人は講習を受けなくとも食品衛生責任者になることができます。
開業
飲食業での経験を積み、自己資金を貯めてコンセプト作り、内装、外装・・・さまざまな準備や手続きをして晴れて開業ということになります。しかし、開業というのはゴールではありません。新たなスタート地点に立ったということです。ここからが本番です。
飲食店開業者の7割が3年以内に廃業すると言われています。飲食業というのはハイリスクな事業です。多額の設備資金を投入して開業したうえに、開業後にも仕入代や人件費、光熱費などの経費が継続的に発生して、それをまかなうだけの売上を出し続けなければなりません。
経験を積むのはもちろん大事ですが、さらに開業リスクをできるだけ下げるために必要なものは知識です。腕や技術に自信があり経験や勘だけで出店して成功するほど甘い世界ではありません。
知識不足のために開業準備段階からすでに失敗する計画だと気づかず、廃業する人が後を絶ちません。そうした知識不足を補える場としてこのブログも書いています。
開業後成功できるかできないかはすでに開業準備で7割以上決まっていると考えてください。
まとめ
今回この記事で開業までの全体像をざっくりと紹介してきました。もうちいど流れをみると
- 飲食経験を積み自己資金を貯める
- コンセプト作り
- 立地、物件の決定
- 資金調達
- 内装工事
- 各種申請届け出
- 開業
自分が今現在どの地点にいるのか確認して、取り組むべきことを明確にして開業後のリスクをできるだけ下げるようにしましょう。